【改造】 HP-A3のオペアンプを交換して遊ぶ。 

HP-A3内部正面


少し前の話になりますが、愛用していたヘッドホンアンプ FOSTEX HP-A3のオペアンプを交換して音質変化を楽しんでみました。

前々より気になっていたオペアンプ毎の音質差というものを体験したくなりました。
ただ回路定数を変更しないでオペアンプを交換するというのは発振・破損の可能性もあり、とてもリスクの高い行為です。
正常に動いているように思えても実はおかしな音になっている可能性もあるわけです。

本当ならば交換するべきではないと思うのですがHP-A3はオペアンプの交換実績が割とあちこちにあるので定番どころであれば大丈夫なのかなと思い切って試してみました。

用意したオペアンプは以下の7種類。どれも秋月電子で入手できる定番品です。
ソケットにかかる電圧を測ってみると±5Vしかないのでその範囲に収まるモノをそろえてみました。
その中でもなるべく発振しにくい物に限定しています。

リンク先 データシートPDFなので注意。

1.NJM5532DD (JRC)
2.MUSES 8820 (JRC)
3.MUSES 8920 (JRC)
4.OPA2604AP (Texas Instruments)
5.LME49860NA (National Semiconductor)
6.OP275 (Anarog Devices)




□ オペアンプの試聴レビュー
先に断っておきますが、以下の内容はごく僅かな差を大げさに書いています。
変化の度合いで言えばヘッドホンを買い換えた方が効果的です。


OPA2134PA (Texas Instruments)
HP-A3内部オペアンプ

HP-A3の標準オペアンプOPA2134PAです。
旧バーブラウン、現行テキサスインスツルメンツから発売されているFET入力のオペアンプです。
ユニティ・ゲインで発振しずらくデータシート特性も悪くないうえ安価なので採用例が多いようです。
いくつか交換してみて最も無難な音質と思いました。少し上下の伸びが抑えられた雰囲気。
艶や奥行き、音場の広がりはあまり感じません。低音はやや盛り上がりますがこれといって特徴が無い。
このオペアンプ用に定数も設定されてあるだけありHP-A3に最も合っているように思えます。
これを基準にして交換した際の違いを確かめてみます。


1.NJM5532DD
NJM5532DD

新日本無線(JRC)のFET入力オペアンプです。業務用機器に採用例が多いようです。
差し替え一発目で「ギュィン」と盛大なポップノイズが出てしまいました。やらかしたと思うほど大きかったです。
まとまった塊感のある音質です。低音の量感があって押し出し感の強い音ですね。
解像度はOPA2134より落ちる印象ですが不自然さが無く安心して聞いていられます。
やや高域の伸びが足りないのでHD650には向かない印象ですが、Fidelio X1だと楽しく聞けました。
どことなく懐かしい雰囲気もあり気に入ったのですがポップ音の問題もあり使用はあきらめました。


2.MUSES 8920
MUSES8920

同じく新日本無線のFET入力オペアンプです。あちこちで高音質と話題になっているようです。
上位モデルにMUSES01というオペアンプもあるのですが、こちらは3千円後半もする超高級オペアンプで動作電圧も高めなので用意しませんでした。

音質はHP-A3に最適との話もあるだけあってクリアさや分離感はOPA2134を上回ります。
キラキラした繊細な高音で少しハイハットが目立つ感じもしますが、低音に芯があり全体的に聞きやすいですね。
ただ私の好みと違うのか聞くほどに疲れやすい音色なのが難点です。
脚色が目立ち、派手で癖のあるオペアンプだと感じました。あまり好きな音じゃないです。


3.MUSES 8820
MUSES8820

新日本無線のバイポーラ入力オペアンプです。上位モデルはMUSES02
MUSES 8920と同じシリーズですが、音質はだいぶ異なります。こちらの方が好みでした。
音質は丸みを帯びた雰囲気がしてどことなくNJM5532DDに近い感じがします。
その割に分離は良く、低音もふっくらしてオペアンプでありながらアナログ的な良さがあります。
少し線が細いようで厚みが足りない感じもしますがOPA2134より広がりがあって結構良い感じ。
全体的に好印象ですが、MUSESシリーズ特有の癖のような物が気になります。
こう、高音がすっと伸びずに踏みとどまっているような、垢抜けない雰囲気でどうもHP-A3には合ってないのかもしれません。


4.OPA2604AP
OPA2604AP

テキサスインスツルメンツのオールFETオペアンプです。定番のオペアンプですね。
高音の響きに特徴があります。OPA2134のレンジを広げた感じでしょうか。
中域が落ち着いているので音場が広がって聞こえます。音に厚みも乗り、妙に説得力のある音です。
MUSES 8920と比べると湿っぽくて曲を選ぶ印象。アコースティックな楽曲にとても合います。
少し曇りのある音質なのでボーカルの入った曲と相性が悪く感じました。


5.LME49860NA
LME49860NA

リニアテクノロジーのバイポーラオペアンプです。他と比べて一つ飛び抜けたスペックを誇ります。
聞いた瞬間これだ!と思いました。解像感が高く抜けの良い音質です。
MUSESやOPAシリーズよりも響きが抑えられて変に強調された部分がありません。
OPA2134と比べてみると、低音の量感は少ないですが不足感は感じませんでした。
音の立ち上がりが鋭く、それでいて分離しすぎないのでとても聞きやすい。
派手な音色のMUSESなどと比べると面白みが無いのですが、すごく気に入りました。
またポップノイズも少なく素性の良さを感じます。常用するならこれだと思いました。


6.OP275
OP275

アナログデバイセスのバイポーラオペアンプです。
なんとなく買ってみたのですが、意外といい音がします。
LME49860NAに次ぐ透明感があり、またボーカルが艶やかでオーディオ的な音がします。
OPA2134のレンジを上下に広げた印象を受けました。音場はどちらかというと狭いと思います。
嫌みさがなく、しかも安いのでLME49860NAと甲乙つけがたい。
あえて比べるなら高音が少し耳障りになる事があるため、聞きやすさで言えばLME49860NAが上でしょうか。
ヘッドホンによってはLME49860NAよりも好きという人もいると思います。


□ 結論

一番無難に聞こえるのは標準のOPA2134です。数あるオペアンプの中でメーカーが選択しただけあります。ただ、あえて交換するとなると私はLME49860NAが最もバランス良くOPA2134より優れていると感じました。少し高音が強くでますが、それを除けば解像感、音場の広がり、レンジ感、分離などどれを取っても良く聞こえました。

オペアンプ一つ交換するだけで印象が変わるのは面白い物ですね。
[ 2016/09/01 03:31 ] ヘッドホンアンプ | TB(0) | CM(0)